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激安ドライバッテリーの考察


最近5千円〜1万円程の非常に安価なドライバッテリーを車用に転用する例が見られますが、ほんとに大丈夫なのかな?と思いちょっと調べてみました。オークション等で見られるこれら安価なドライバッテリーは本来、無停電電源装置(UPS)等への利用にむけて製造されている物であったり、車用として販売はされていてもスペックからどうみてもそのカラーリングを変えただけではないのかといったものがほとんどです。
無停電電源装置(UPS)等用の安価なドライバッテリーをただ安いからという理由で何も考えずに自動車用バッテリーとして転用すべき物ではないのはいうまでもないのですが、使えるのであれば安いに越したことはありません。

一番心配するのがこれら安価なドライバッテリーの使用温度範囲です。いわゆる激安バッテリーの代表であるLONGブランドの製品の使用温度範囲は放電:-15〜50°C 充電:0〜40°C 保存:-15〜40°C、無停電電源装置(UPS)等用として販売されているGS日本電池 PE12V17 ポータラック(PORTALAC)の使用温度範囲は(放電時)-20〜50°C(充電時)0〜+40°C(保存時)-20〜+40°C、同様にパナソニック LC-RD1217J/LC-PD1217J の使用温度範囲は放 電(機器使用時):-15〜50°C  充 電 : 0〜40°C  保 存 :-15〜40°C、となっており、共にこの温度範囲以外での使用は蓄電池の劣化を早め、破損や変形、火災、爆発の原因になる恐れがあると記載されています。
前記のデータを見ればわかるように、どれも放電時で-20(-15)〜50°Cとなっていますが、自動車のエンジンルームに搭載されるバッテリーがこの温度範囲に収まるでしょうか?。極寒の地でもなければ下限のマイナス温度は気にしなくても良いかもしれませんが、上限の50度というのは自動車のエンジンルームであれば、あっさり超えてしまう温度であり、たとえ車室内への搭載だとしても夏場や炎天下の閉め切った車内であれば、ゆうに超えてしまう温度です。

上記のことから、無停電電源装置(UPS)等用の安価なドライバッテリーの自動車用バッテリーとしての転用は止めた方がよいと考えたのですが、自動車や単車用として販売されているオデッセイバッテリーの使用温度範囲を調べてみました。

オデッセイバッテリーの使用温度範囲は-40℃〜60℃となっています。上はたったの10℃しか差がありません。これがメタルジャケット装備の有無によるものであろうことは察しがつくのですが、たったそれだけ?というのが正直な感想です。でもおかしいなと思い日本正規代理店プロジェクションさんに問い合わせたところ、LB品番のアルティメイトシリーズは-40℃〜80℃、PC品番のスタンダードシリーズは-40℃〜40℃とのことでした。要はメタルジャケット装備の有無でシリーズが分けられているようで、メタルジャケット装備のアルティメットシリーズはLB品番、装備のないスタンダードシリーズはLC品番としているようだ。もっともこの品番分けは日本正規代理店のみでおこなっており、本国や並行輸入品は装備の有る無しに関わらずLC品番となっている。
さらにオデッセイバッテリーの本国公式サイトを見てみると、現在、日本正規代理店のサイトでは並行輸入品のオデッセイバッテリーはメタルジャケットがないので性能が劣るというリリースをしていますが、当の本国発売のオデッセイバッテリー、いわゆる並行輸入品の最新のものはメタルジャケット装備のPC680MJ(PC680MJT)となっている場合が多く、この点では並行輸入品も正規品も差がないのだが、肝心のCCAの数値が大きく異なっており、並行輸入品のPC680MJは220CCAだが、正規品は280CCAとなっていた。

容量からくるスペックの差はおいておくとして、使用温度データだけを見ていくと安価なドライバッテリーもメタルジャケットがないだけで、使用温度範囲に気をつければ遜色ないものなのかなと考えたりもしますが、オデッセイバッテリーと激安バッテリーでは100%充放電の回数に大きな違いがあります。
激安ドライバッテリーはわずか250回ですが、オデッセイバッテリーは400回となっています。CCAや最高放電電流などがどうしてもポイントになりがちですが、100%充放電の耐用回数こそ重要です。重量軽減をねらうとどうしても容量の小さなバッテリーとなる為、100%放電時の電圧である11.6Vに限りなく近いところまでバッテリーを酷使してしまうことは多く、そこからの充放電の耐用回数が重要となります。

あとは気になるのは価格ですが、これは本国での販売価格を調べると、日本での販売価格は選択に際して心配すべき項目ではないと考えるに至ります。
というのも本国ではメタルジャケット装備のPC680MJ(PC680MJT)は88〜98ドル程で販売されているのです。1ドル100円と考えれば1万円を割る価格です。正直、この時点まで本国販売価格を調べることなくドライバッテリーを二万数千円で購入してきた身にとっては、こんなに本国では安かったのかと正直驚きました。

さて私の結論ですが、CCAや最高放電電流といった基本性能の点では安価なドライバッテリーも高価なドライバッテリーも大差ないというか、ほぼ同等。ただし、使用温度範囲と100%充放電の耐用回数においてはオデッセイバッテリー等と比べると明確な差があるので、激安バッテリーはとくに毎日の電圧チェックに注意が必要。あと気にすべきはメタルジャケットが装備されているか否かなので、メタルジャケット装備のない安価なドライバッテリーは5千円のものも1万円のものも同レベルの製品であって、高い温度になることのあるエンジンルームに搭載しないのであれば選択してもよいかもしれない。

でも、私はこういった激安ドライバッテリーは使いません。
やはり使用温度範囲と100%充放電の耐用回数がポイントとなるし、安全性に大きく影響するからです。安いから、オークションの説明では大丈夫だと書いてあるからという理由でとびついてバッテリーから火災や爆発が起ここるなどトラブルがでてからでは遅いと考えます。また激安ドライバッテリーの2番手であるとともに、LONGブランドのバッテリーと製品のサイズや仕様が酷似しているD-COMドライバッテリーのウェブサイトでは注意書きとしてバッテリー使用中にケースの膨張等が起こった場合は仕様を中止するようにと、そういった現象の起こった車種データが多数公開されていました。

それとまぁ老婆心で書かせてもらうとすれば、オークションで目につく激安ドライバッテリーを安全面からおすすめしないのは言うまでもないが、これは秋月電子で5千円程で販売されているLONGブランドのドライバッテリーと全くの同製品なので、2倍近い価格で落札するのはちょっと考えた方がいいんじゃないのかなと思う。おまけに100%充放電の耐用回数250回ではなく、50%充放電の耐用回数550回を記載して出品してる例が多いのも気になる。
それにだ、2万5千円程でオデッセイドライバッテリーを購入したとしても、2年使えば一日あたり34円、3年使えれば一日あたり22円、たったこれだけです。これだけの価格でしっかりと安心が買えるのであれば、なにも安全性に怪しい製品をわざわざ冒険して使う理由等ないだろうと思います。

ドライバッテリー
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